WILD AFRICA 37 チーターの狩りを撮る

アフリカの野生動物を撮影する人間にとって、全速力で獲物を追うチーターの写真はものすごく欲しい”トロフィー”の一つだ。かく言う私も、1993年にタンザニアで動物写真を撮り始めて以来25年間ずっと挑戦し続けてきた。そして今年の1月、数年来通い続けているボツワナのマシャトゥ動物保護区で、やっとある程度納得のいくハンティングシーンを撮ることができた。

”ある程度”というのは、時刻が日没後だったためにとても暗く、カメラのISO感度をかなり上げざるをえなかったためだ(感度を上げるに従って写真の画質は低下する)。

チーターの狩りを撮るには様々な条件が一度に満たされねばならない。第一の条件は、当然ながらチーターを発見すること。それも腹を減らしたチーターをだ。空腹かどうかは腹の凹み具合や尾の先を左右にパタパタと動かす仕草などで見分ける。付近にインパラやガゼルといった獲物の存在も不可欠で、チーターがその獲物に気づかれることなく、50メートルくらいの距離まで忍び寄れるだけの地形的条件ないしは植生も必要だ。遠すぎる位置からでは、いくらダッシュをかけても獲物に逃げ切られてしまう公算が高いことをチーターはよく心得ている。

ところが、撮影をする側にとって遮蔽物が多すぎるのは問題で、なるべく開けた場所で狩りをして欲しい。しかもチェイスがこちらに向かってくる形で起きてくれなければアップでは撮れない。となると、手前に獲物、その奥にチーターが見えるポジションで待ち構えるのが一番確実で、車をそのような場所に停められるかどうかが鍵となる。あとはいざ狩りが始まったとき、追われた獲物がこちらに向かって逃げてくれるよう、ひたすら願うのみだ。

1月9日は、ついにこれらの条件がすべて同時に揃った、私にとって記念すべき日となった。チーターがダッシュを開始した直後、危険に気づいたインパラは全力で車のすぐ左を駆け抜け、その後をチーターが猛スピードで追った。写真はそのときのものだ。しかもこの直後、何とインパラが追っ手を振り切ろうと180度に近いターンをし、今度は車の右側をすり抜けていったため、チーターも反転し、最終的には車の右前方でインパラを捕らえた。最高時速100km以上で走るチーターのチェイス一部始終を、それもかなりの近距離から撮影できたのは25年間で初めての経験だった。粘り強く続けていればやがてチャンスは巡ってくる。これだからサファリはやめられないのだ。

撮影データ:ニコンD850、80-400mm f/4.5-5.6 VR、1/1250秒 f5.6 ISO7200

写真・文 山形 豪さん

やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。少年時代を西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物や風景の写真を撮り始める。2000年以降は、南部アフリカを主なフィールドとして活躍。サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。写真集「From The Land of Good Hope(風景写真出版)」、著書に「ライオンはとてつもなく不味い(集英社新書ヴィジュアル版)」がある。www.goyamagata.com