『アメリカーナ』チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著 / くぼたのぞみ=訳 / 河出書房新社

仕事柄、アフリカ関連の書籍を読む機会が多くあります。ほとんどは、年代を問わず旅行記、現地のルポタージュものが多く、やっぱりアフリカの現状のハードさに焦点を当てたようなものを手に取ってしまう事が多いのですが、この本は『小説』、しかも『恋愛小説』です。

主人公は、ナイジェリア人の女性イファメル。彼女がディアスポラ(=移民)として、ナイジェリアからアメリカに移り住み10数年、いつものように自分の縮れたアフリカンヘアーを結いに、隣町までセネガル人の女性が経営するサロンに行くところから物語は始まります。
『アメリカーナ』という言葉は、レゴス(ナイジェリアの経済首都)の街に暮らすアメリカ帰りのナイジェリア人の事を『アメリカかぶれ』の意味を含めてこう呼ぶそうです。
やたらとアメリカ的な英語表現を使ったり、レゴスのレストランで、いちいちポテトが有機栽培のものかどうか確認したり、細かい描写にニヤリとします。

全体の物語構成はいたってシンプル。イファメルがアメリカで『アフリカ人』として過ごした日々、そしてナイジェリアに戻り、かつての恋人と再会する、随分王道なラブストーリーですが、とにかく面白い。現代に生きる自分たちと同世代のナイジェリアの人達の欧米での暮らし、その中で当たり前のように生活し、当たり前のように恋愛し、日々を生きる中で否応なく意識させられる『人種』の問題。アメリカで生きる中で、主人公イファメルはこの『人種』に関して『人種の歯、あるいは非アメリカ黒人によるアメリカ黒人についてのさまざまな考察』と題したブログを書き、注目されていきます。
イファメルはアメリカの抱える『人種』の問題に対して、批判的な目を向けるのではなく、ちょっと毒を含んだ『考察』を綴ります。
またかつての恋人オビンゼは、同じようにイギリスで移民として暮らし、こちらはこちらではっきりと『敵意』に満ちた差別に直面し苦悩します。
こう書くと、センシティブな問題なだけに構えてしまいそうですが、この本の魅力は、あえて『』付きで言わせてもらいますが、『アフリカ人』である彼・彼女らが、様々な問題を抱えるこの現代社会の中で繰り広げられる圧倒的なラブストーリーにあります。とにかく登場人物の『キャラ立ち』が半端ない。同時代に生きる同世代の彼・彼女らをとにかく応援したくなります。物語の端々に散りばめられたディテール、セリフ回しに、ドキッとしたり共感を感じたり、528ページもある分厚い本ですが夢中で読み進んでしまいます。
読み終えた後、きっと誰かとこの本について語り合いたくなると思います。
私は30代の男性ですが、同年代の女性が読んだらもっと共感するような場面が多いかも。

「ナイジェリアからアメリカへ渡ったイフェメルは、初めて自分が『黒人』なのだと知った。アフリカには『ブラック』は存在しないから。」

「なんでいっつも人種のことを話さなければいけないんですか? われわれはただの人間ってことになれないんですか?」と、白人の恋人が問いかける。
主人公は「それがまさに白人特権階級なのよ、そういえることが。人種があなたにとって現実に存在しないのは、それが障害になったことがないからよ。黒人にとって選択肢はないの」と答える。

「頑張らなくっちゃ。レゴスはみんなが頑張るところなんだから。」

最後まで読んで、この話は著者のチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの『私小説』ではないのかな、とも思いました。
きっと19歳でアメリカに渡った著者自身の人生が反映されているのだと思います。

著者は10年ほど前に有名になったTEDトークがあります。こちらも併せて視聴すると、よりこの本が楽しめるかもしれません。
【チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ: シングルストーリーの危険性】
https://www.youtube.com/watch?time_continue=997&v=D9Ihs241zeg
https://logmi.jp/business/articles/89836 (←スピーチの日本語訳)

この本については、まだまだ書きたいことがたくさんありますが、長くなりそうなのでこの辺で。
ここ数年読んだアフリカ関連書籍の中で、私の中では圧倒的にNO.1の一冊でした。
是非、おススメです。

by 生野