Africa Deep!! 65 火山とクレーター アフリカの山の魅力とは

僕は若い頃、クライミングにはまっていた時期があり、海外へもたびたび自分の腕を試すために武者修行の旅に出ていた。標高差千メートルを超える大岩壁やナイフのように研ぎ澄まされた雪稜にルートを拓いていくときの高揚感。自分のちっぽけなからだを大自然の中に投げ出して、テクニックと体力を駆使しながら少しずつ高度を稼ぎ、やがて山頂に達する。あのときの達成感というか充足感を越える体験は、人生の中でも滅多に得られるものではない。命を懸けてまでクライミングや登山という行為にうつつを抜かす理由はたぶんそういうところにある。

いっぽう円錐形の火山は、特別な技術を必要とすることなく山頂に達することができる。でも断言してよいが、火山を登ることはとてつもなくドキドキすることでもある。僕の火山体験はかれこれ30年以上前にさかのぼる。東京都の伊豆大島。三原山が噴火した事件を覚えている方もおられるだろう。あのときはほぼ全島民の一万人以上が島外に避難した。避難は一カ月ほどで解除されたが、僕はその直後に島へ渡った。何を考えての行動だったのか理由は思い出せない。

覚えているのは、何かに憑かれたように島を歩きまわったこと。溶岩が家屋を押し流し、あちこちで煙がくすぶっていた。行けるところまで行ってみようと三原山を登り始めたが、案の定、途中にロープが張られ立ち入り禁止になっていた。靴の裏からじんわり熱が伝わってきた。「地球は生きているんだな」とまざまざと実感させられた瞬間だった。

アフリカにはよく知られているように大地溝帯というものがある。地下のプレートが活発にぶつかり合う場所だ。だから当然、その周辺には地下のマントルがうねり噴き出す箇所、つまり火山がある。キリマンジャロもケニア山も火山なのである。キリマンジャロをノーマルルートから登ったことのある人なら、マンダラ小屋を少し過ぎた右手にクレーターがあったことを覚えているだろう。

僕のおすすめの火山は、メルー山。タンザニアのアルーシャの町から眺めることができる山である。キリマンジャロの陰に隠れてあまり知られていないが、山頂部には阿蘇山のような巨大なクレーターがあり、かつての噴火口をのぞむことができる。登山道は火山灰が降り積もったところに付けられているため、靴が埋もれて歩きにくいことこのうえない。しかし今にも噴火しそうなクレーターの美しい姿態は「地球が生きている」ことを五感に呼び覚ましてくれるに違いない。

文・写真 船尾 修さん

船尾修さん
1960年神戸生まれ。1984年に初めてアフリカを訪れて以来、多様な民族や文化に魅せられ放浪旅行を繰り返し、写真家となる。[地球と人間の関係性]をテーマに作品を発表し続けている。アフリカ関連の著書に、「アフリカ 豊穣と混沌の大陸」「循環と共存の森から」「UJAMAA」などがある。最新作の「フィリピン残留日本人」が第25回林忠彦賞と第16回さがみはら写真賞をW受賞した。
公式ウエブサイト http://www.funaoosamu.com/