2013.04.26発 ドラケンスバーグ・トレッキング 11日間

GWに南アフリカとレソト王国にまたがるドラケンスバーグ山脈に行ってきました。
ドラケンスバーグはアフリカーンス語で「竜の峰々」を意味しており、ズールー語ではウカランバ「槍の障壁」といいます。その名の通り、急峻な山々が延々と屏風のように立ち並んでいます。
無数の峰々の、稜線やら尾根やら谷の面白い所を歩いて食べて寝て、歩いて食べて寝て、とにかく毎日歩いて食べて寝ました。歩き旅が好きな人にはたまりませんね。

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インド洋に面した港湾都市ダーバンから雪をかぶった山並みが見えました。蒸し暑い海岸線から車で3時間ほどしか離れていないので、雪がそこに見えることになんとなく現実味がなく、見たことのないドラケンスバーグの一面を見られるような気がしてワクワクしました。

海から近い位置に高い山脈があると決まってその場所の気象は荒いものになります。冬に日本海側からの水蒸気を含んだ季節風を受け止める日本アルプスも世界一の降雪量をもたらします。
ドラケンスバーグの2-3,000m級の「槍の障壁」はインド洋からの東南貿易風を受け止めて大量の雨を降らし、雷を落とします。世界の雷分布図を見るとドラケンスバーグが雷の多い場所だということが分かります。(これを見るとコンゴ盆地が激しいですね。)

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ドラケンスバーグは山というよりは崖と呼ぶ方が正確だと言われます。マグマの上昇にともなう隆起によってではなく、地殻が分裂したときの割目がむき出しになっているものです。かつてゴンドワナ大陸やパンゲア大陸と呼ばれる超大陸が分裂と衝突を繰り替えしていたと言われますが、この活動によりマグマが地表に噴出して地表を覆い、そして冷えてできた火山岩の厚い層、この層の割目がドラケンスバーグです。こういった超大陸の活動の形跡は古期造山帯と呼ばれ、数億年の歴史をもつ最も古い山地ということになります。(アパラチア、アルタイ、ウラル山脈など)ドラケンスバーグはこのとてつもない時間の堆積の断面図です。

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ドラケンスバーグは日本の山のように木々に覆われていません。ヒースなどの一年草が山肌を覆っています。これはドラケンスバーグに落ちる大量の雷が植物を焼き払ってしまうからです。6-8月の冬期に草は枯れ、9月以降の落雷によって焼き払われます。ドラケンスバーグの代表的な植物はこの定期的な山火事を発芽の条件として(山火事による地熱の上昇により発芽する)、生存に利用しています。有名なプロテアの木もこの生存能力をもっています。逆に、谷間や大きな岩がごろごろしている場所に限って高木が密生しています。これはこういった生存方法をもたず、たまたま火が及ばない場所に生存し続けている離れ小島のような古い森です。この森はバブーンやブッシュバックの住処になっています。

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雷が多いところとはいえ、天気の安定している時期に行けば晴天のトレッキングを楽しめます。GWはとても天気が安定しており今回は一度も雨に降られることもありませんでした。ただ、午後になると日照による温度上昇により上昇気流が生まれて、ドラケンスバーグ上(レソト)に溜まっている低温の空気の層とぶつかります。稜線沿いにみるみる雲が湧いてきます。稜線はちょうど温度の違う空気のぶつかる場所になるため、すぐ頭の上に雲の層がせまります。ドラケンスバーグの荒々しい気象条件を肌身に感じます。

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ドラケンスバーグに行くのなら、欠かしてはならないのが洞窟泊のトレッキングです。浸食の激しいドラケンスバーグには快適な洞窟がたくさんあります。人気のない谷の深くまで分け入ってウィルダネスに浸ります。アフリカには星空をきれいに見ることのできる場所はたくさんありますが、ここにも陰りのない最高の星空があります。星がたくさん見られるというレベルではなく、明るさの違う星々が立体的に、3D映像のように感じられ、あたかも空が降ってきているように感じられます。洞窟にはまったく何もありませんので、寝袋は持参し食事は添乗員がせっせとつくります。今回は田舎のスーパーで買った小麦粉でパンを焼いてみました。軽く発酵させてフライパンで平焼きし、これまたスーパーで買ったハムとバジルを挟んでナンロールのようにしてみました。(多くはロールにまで至らずサンドになってしまいましたが)。南アフリカ産の赤ワインもあっという間に空いてしまいました。次は2-3本持っていかないと。

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ドラケンスバーグにはサン(ブッシュマン)の岩絵がたくさん残されています。
古いものは約3万年前まで時間をさかのぼるそうです。約3万年前といえばおおよそホモサピエンスが日本列島にたどり着いたころということになります。この時間感覚からすると、近代以降にズールーやヨーロピアン、バソトなどの牧畜、農耕民からの攻撃や排斥を受けて姿を消したのはほんのつい最近ということになります。
私のお気に入りの岩絵スポットはピナクルロックと呼ばれていますが、その名の通りとんがった形をしています。緩やかな斜面にゴロンと転がりだした大きな岩です。岩は平らな一面をもっていて天然のキャンバスのようですが、ヒーリングダンスの様子、トランス(恍惚状態)の表現、狩りの様子、子供を囲む親の姿、死人の描写など多様な絵を見ることができます。

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しかしこの場所の魅力は岩絵だけに留まりません。場所そのものの魅力があります。サンが岩絵を描く場所にはいくつかの条件があります。眺めが良いこと、音が反響する空間であること、水が近くにあること、そしてイワツバメ(スイフト)の巣があることです。これらの条件をより多く満たしていることが彼らにとってより聖なる場所ということになり、より多くの絵が残されています。このピナクルロックはすべての条件をクリアした最適な場所、とても聖なる場所ということになります。少し離れた場所からこの岩を眺めると特別な場所であることは一目瞭然です。この山域のどこからでも目に入る位置にあり、ランドマークの双耳峰ホドゥソンズピークが背景になっています。私がサンであったならばきっとここに岩絵を残したくなったと思えます。

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※真ん中に小さく見える尖がった岩がピナクルロック。この辺りは谷が深く動物の気配が濃い。左上に双耳峰のホドゥソンズピーク。右上の雪山が南部アフリカ最高峰タバナントレニャナ。

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※サンの岩絵の重要なモチーフになるアンテロープのエランド。大きな群れがロッジ付近に現れて宿泊客もロッジのスタッフも大騒ぎ。

ドラケンスバーグにはトレッキングのルートがたくさんあります。まだ知らない魅力的なルートが隠されているかもしれません。今後の進化が楽しみなツアーです。

ドラケンスバーグ・トレッキング 11日間

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有冨