マサイ・マラ滞在記

タレック川大増水の巻

1日目


マサイ・マラは、3回目の訪問であるが、今回はサーバル・キャット、カラカルの写真が撮れたらという思いでやって来た。可能性は少ないことは承知の上であるが、同じロッジに6連泊の予定であった。
ケニア渡航前より、マサイ・マラは、雨が降っているという情報であったが、旅行会社のスタッフから今年の雨は、尋常ではないと念を押された。サバンナの雨が、どう尋常でないのか全く予測はできなかった。

ナイロビのウィルソン空港から、マサイ・マラの数箇所にエアーケニアの便は着陸するが、最初に降りた滑走路は、ぬかるんでいた。飛行機もスタックの危険があれば、着陸しないだろう。
宿泊は、タレック川沿いのイルケリアニ・ロッジだった。川を見ると濁った水が増水し、いつもの穏やかな流れではなく、濁流の音が響いていた。その音を耳にしながらランチを摂った。

少し休憩する間もなく午後のゲームドライブに出かけた。曇り空のため暑くはなく、丁度良いサファリ日和。トピ、ゾウに出遭った後、雨に濡れ色鮮やかになったサバンナに3頭のチーターを発見というより先に発見して見ていたサファリカーを発見したともいえる。
その後、ハイエナ、メスライオンと初日からなかなかの好スタートであった。


2日目


2日目は、フルディサファリ。朝、雨が降っていたため、小雨になるまで1時間程待機してぬかるんだ道を出発した。
東のエリアに向かう予定のようだ。しばらく、走るとキリンの群れを発見すると手前に丸くなって寝ている動物がいた。最初はハイエナと間違えたが、体の模様、頭の形からチーターと判明。
しばらくすると、雨に濡れた体の毛づくろいを始めた。キリンとチーターの組み合わせは、初めてだ。
撮影には動物までの距離が少し遠いが、とりあえずシャッターを押した。おもしろい写真が撮れないかと期待したが、チーターは、しばらくしてキリンの群れから遠ざかっていった。

この日の夕方、ライオンの群れに遭遇、オスはいなかったが、数頭のメスに数頭の子供が、戯れていた。マサイ・マラに訪れるたびにライオンの子供に遭えるが、仕草、表情は、いつまで見ていても飽きない。
みんな成長してほしいと祈りつつ、ロッジへの帰路に着くが、だんだん雲行きが怪しくなってきた。


ライオン

ロッジに到着したとたん、雨が降り出した。この時、翌朝のことは想像もしていなかった。
夕食を摂り、テントに戻るが、川の濁流音が気になってしかたがない。
私のテントは、タレック川のカーブしている場所に張ってある。目の前で濁った水が、渦巻き、木の枝が水の流れに振り回されていた。
寝ようとベッドに横になるが、激しさを増してくる濁流音が、気になって眠れないので、懐中電灯で川を照らしてみると水かさは、増しているではないか。このまま増えていったらと考えると不安がつのる。


3日目


濁流音を気にしながらテントの隙間から外を見ると、薄明るくなってきた。テントを出てみると、雨は小降りなのだが、川の水は昨晩より増えていた。
テントの張ってある大地の部分と、水面との差は、あと50センチぐらいしかない。雨は、小降りなのだから、もう、水は増えないかもしれないと思いつつ、歩道を歩いて敷地内の様子を見ようと途中まで行くと、目の前に池が広がっていた。
自分のいたテントは、わりと小高い場所だったことを悟った。


テント

水深が分らないため、水に入ることはやめて自分のテントに引き返した。
これでは、食事するテントにも行けないし水が引くまで待つことにした。しばらくするとロッジのスタッフがやってきて、朝食だと呼びに来たが、どうやって来たのか不思議だった。
ついて行くと遠回りして水かさの低いところを選んで来たようだ。
でも、膝ぐらいまで水に浸かって食事をするテントに着いた。

マネージャーは、うろうろしているし荷物が沢山置いてあった。他の宿泊客の話を聞くと、夜中にテントが浸水しかかった時、荷物を持って安全なテントに引越しを繰り返していたと聞いて驚いた。


タレック川

自分のテントは、浸水しなかったため、そこまでの状態になっているとは想像していなかった。
ドライバーは、一晩中起きてテントを見回っていたというのだ。

テントが、流されて犠牲者が出ていたら、CNNのニュースで放送されていただろうか。
手配会社のドライバーは、ここは危険だからとにかく引越した方がいいと言うが、どこへ・・・・・
マサイの村に泊めてもらうという案も出してきた。行く所がないのならもうしかたないのか。

そのうち、引っ越すことができるロッジの部屋の確保ができたらしいと情報が入るが、タレック川が、増水してタレックゲイト近くの橋を渡れないし、他の橋は、「gone(流された) !」と聞かされた。

水が引くまで待ってゲイト近くの橋を渡るしかないのか、ドライバーといっしょに川を見に行くと増水した川の手前で、数台の車が渡ることができず待機していた。
川を見て、待つしかないと諦めた。
話かけてきたマサイの青年に、泳いで渡ろうかと言うと、笑ってくれた。ロッジに戻ることにして、途中車の中でドライバーの携帯に着信音が鳴る。新しい情報が、入ったようだ。


テント

人間だけ移動させることができる方法が、見つかったのだ。
同じタレツク川沿いにフィッグツリーというロッジがあるが、タレック川に架かるエントランスの橋を渡ってロッジに入る造りになっているので、今宿泊しているイルケリアニのロッジからフィッグツリーのロッジの裏まで車で移動し、ロッジ敷地内を徒歩で通らしてもらいエントランスの橋を渡って、タレック川の対岸に行き、引越し先のキーコロックというロッジから車で迎えに来てもらうというのだ。

タレック川沿いにマラ・シンバ、フィッグツリーというロッジがあるが、そこは無事だったらしい。
慌しくチェックアウトをして、ロッジを後にして車でフィッグツリーに向かった。
フィッグツリーの橋を渡る時、驚いたのは、水面から橋まで3メートルぐらいしかなかった。いつもなら、かなり下に水面がある。

キーコロック・ロッジの車に乗って、晴れた良い天気のサバンナを走った。昨晩、寝ていないのと暖かい陽射しが眠気を誘う。
キーコロックに到着、チェックイン。後から聞いた話だが、丁度必要な部屋数だけ空いていたということだ。

とりあえず、人間だけ引っ越すことはできたのだが、手配会社の車とドライバーは、来れないのだから明日から、どうなるのか。夕方連絡をすると言っていたが連絡が来ない。

まあ、明日からここでゆっくりするしかないのかと思い夕食を摂っていると、ドライバーが現われた。車のドアの真ん中ぐらいまで水に浸かって川を渡ってきたというのだ。
よかった、これで明日からのゲームドライブはできる。このロッジは、部屋によっては夜中にカバが、歩いて近くまで来るらしいが、鳴き声と草を踏みしめる足音が聴こえた。

written by 日比野倉氏さん
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