| グランドサハラ エクスペディション -
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月風かおり 海へ(アガデス〜タウア〜ニアメ〜ワガドゥグ〜ガーナへ)
【ブラックアフリカ】
サハラからサヘルへの移動。完全なアスファルトになる。南下を進めると少しずつ緑が増えてきた。遊牧する人が増えラクダから牛・ヤギが多くなる。そして風景に明色が加わってくる。小さな村TOUAHを過ぎると沼地だー水だー。チュニジアのオアシスで緑が消えてから三千キロ余り、水の営みにたどり着く。水辺の鮮やかなグリーンが目にしみる。路肩にもたっぷりと雑草が茂る。
水辺での小休止。子供たちがどんどん集まってきた。乾燥した砂漠の子供たちより顔に艶がある。この二日の移動でアラブ系の顔立ちが消え明らかにネグロイドに変わってきた。暑さの為ターバンは巻いている。私は水辺に立ち、あれ程静寂で過酷だったサハラが手の届かない遥か遠くになってしまった事を痛切に感じた。サヘルは光と色と臭気と喧騒のブラックアフリカの入り口だった。
今日の宿はホットスプリングらしい。つまりお湯が出るの(予定)だ。小ざっぱりした部屋のクジを引くと大当たりだった。・・・が途中で止まった。全員が調子にのって同じ時間にひねるとこうなる。このタイミングもアフリカでは重要なのである。
夕食後、街歩きをしてみる。相変わらず道路は砂が多いから、まだゴム草履が重宝する。外灯もなく並びの小さな雑貨店の裸電球だけでよく皆は目がきくものだ。イスラムの衣服が高々と積んである店先にある街頭テレビに人が集まっている。14インチの小さなテレビの画質は結構ビリビリである。衛星だろう。地べたに座って子供から大人まで凝視している。私もテレビを見る。思えば砂漠越えでテレビなど久しい機械である。
そのうち視線が自分に移り、一人一人の大きな目と合わせる度にコクコクとうなずく。一人の青年がイスを持ってきてくれた。半分がテレビ、半分が怪しい東洋人を見る。なんて心地よい不思議だろう
。番組はプロモーションビデオ、音楽番組が多い。ニュースは英語、字幕はアラビア語のテロップが流れる。時にフランス語も入る。アフリカは歴史的に常に他国に影響されてきた為、公用語としての言葉の他に部族語などアラビックも混ざってごちゃまぜである。もちろん日本語など知る由もないが、何故か彼らは「ジャッキーチェン」と日本人を混同している。
 
【澄んだ目】
タウアからドゥゴンドウィッチへ向う道は目に飛び込んでくる風景の中で時を追うと増えてくるものがたくさんある。牛が増える、ロバが増える、ヤギも増える、畑も増える、車も人も小さな村も・・・。たいてい幹線道は村のど真ん中を走っているので村の手前で減速し低速で人々の生活を見ながら進む。
村をぬけると再びハイスピード。この繰り返しだ。相変わらず空気中には細かい砂塵が舞っているが、砂の世界の“不毛”を感じさせるものは何もない。空川に褐色の水が流れ畑に引く水路も作られている。ムンムンとした熱気と舞い上がるほこりの中、ブラックの熱い生活力と生命力が風光の中に広がってきた。
十二月二十四日、日本では煌めくイルミネーションが街を飾っていることだろう。今、自分が行き過ぎた道端には少年が操るロバの荷車が日暮れにたどり着くだろうかという速さで走り、水くみの女の子が重い桶を頭上で運ぶ姿があった。これは異世界ではなくそれぞれの国の“日常”と考えるしか対処しようがなかった。
砂漠ライドと悪路が続いたせいだろう、三度目のパンク。路肩で修理していると何処からともなく人が集まる。こちらから行かなくても生活臭をどんどん押し付けてくれるのだ。どのくらい着続けたらこんなボロになるのだろうという位の衣服・硬化したカカトの皮肉・泥のおしろいを塗った様に汚れた顔。しかし彼らの白い歯とキラキラと輝く瞳が眩しくて仕方なかった。それは汚れを知らない澄んだ目だった。人間が放つ表現力をこんなにも強烈に受け止めてしまうなんて。
【サバンナへ そして熱帯の国へ】
カメラの被写体が壮大な自然から人間そのものに移っていく。私たちはそんな人々をかきわけながら白く煙った土色のサバンナを西へ。ニジェールの首都ニアメに入ったのだった。チュニジア以来何千キロぶりの信号だ。車が多い、人が多い。街の走り方を忘れてしまった。ニアメは北緯13度くらい。暑さのせいか体調を崩す。食欲がまるでなくなってしまった。ロングツーリングでは体調管理が重要である。暑さ、寒さ、気象条件をまともに体で受ける二輪はひとたび体調を崩せばつらいライディングになってしまう。
ニアメからブルキナファソに向うサバンナにバオバブの木が現れ始める。根っこがそのままひっくり返って空にはえている様な竒木だ。私たちは荒削りのアスファルトを熱さに挑戦する様にアクセルを開く。今は乾期。温度計は45度を指していた。ブルキナファソの首都ワガドゥグに到着したのは十二月二十六日、照りつける太陽に汗をしぼり取られた暑い午後だった。コンビニエンスストアのあるガソリンスタンド・ヨーロピアンが経営するバーガーショップ・ガラス張りのショーウィンドーに並んだモトサイクル・中国製の雑貨がひしめく大きなマルシェ・女性の鮮やかなファッション・都市と田舎の対称的な風景。飛行機で簡単にこの街に入ってしまえば分からない事がいっぱいあっただろう。宿にて砂と熱さに頑張ってきたバイクのメンテナンスを行う。思ったよりタイヤは減ってないが、これもアクラでもう交換になるだろう。
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