グランドサハラ エクスペディション 帰還
(セネガル〜モーリタニア〜西サハラ〜 モロッコ〜ポルトガル〜スペイン)- p16
月風かおり

【迷宮都市、フェズへ】
朝は約束どおりファティファの家を8時に訪ねる。もう迷路は迷わない。
旅行バックの底に眠っている不用品を持っていくことにした。せめてもの手みやげだ。
ファティファのお母さんにおかゆを作ってもらい、久しぶりの雑炊の感触を味わう。なつかしい。
どうか写真を撮ってくれというので驚いてしまった。イスラム圏では、特に女性は嫌うはず・・かなりフリーな地域もあると聞くが、これは旅人への親愛の印かもしれない。
ファティファとジャミラに別れを言い、イマ・アティフがホテルまで私を送る。
私はバイクを止めていた駐車場に行き、すぐに、イマ・アティフを乗せて、朝のモスクへ走った。
後ろで、右、左と指示する彼は、結構ご機嫌だった。昨日夕日に浮かんだモスクはこんなに大きかったのか、とジャマ・エル・フナ広場に立つミナレットを仰ぎながら、朝靄のマラケシュのメディナを走り抜けたのだった。
最初の計画では、このマラケシュから南下し、アトラスを越え、標高2260メートルのティシュカ峠から、ワルザザードに入り、このカスバ街道の入り口を基点に砂漠のオアシス、エルフォードへ、そして再びアトラスを越え、ミデルの村からフェズへ入る4日回りの予定だった。
このカスバ街道は世界遺産、アイト・ベン・ハッドゥの土の城、(アラビアのロレンスのロケ地になった)や、北回りの街道は点在するオアシスの町にベルベル人の生活がなお残されているという、モロッコの中でも『月の砂漠』へ誘う神秘的なルートなのである。
しかし、この4日のルートは魅力的でもあったが、危険でもあった。アトラスの雪である。サハラにとって2月はベストシーズンであってもアトラスはそうはいかない。我々はこのルートを回避することを決め、フェズに向かうことにした。  
 2/14 北緯34度。東京とほとんど同じ緯度だ。朝は寒い。丘陵地のワィンディングに残雪を見ながら、カスバ街道へのアトラス越えは回避して正解だったと思った。まるで絵葉書のような風景、モロッコの北部はアフリカとは思えない。
FES(フェズ)はアトラスの盆地にあり、モロッコの宗教、芸術、文化の中心である。新市街、と旧市街があり、壁に囲まれた旧市街がいわいる世界最大級の迷路と呼ばれている地区である。マラケシュの平坦なスークより高低さがあり、日の当たらない地下に無数の人道が雛壇のように存在し、その奥にさらに暮らしがある。正に迷宮都市なのだ。
私は雑踏に混ざるコーランの響きを感じながら、細い路地を歩き回った。石畳を行きかうロバの荷馬車、イスラムの長衣、彫金、モザイクタイル、陶器、絨毯、なめし革の作業場、この国の工芸品の多さには驚かされる。遠くなった砂漠の鉱石、'サハラのバラ'、や化石もここでは手に入る。翌日も整備の合間を縫って、旧市街を練り歩いた。